かつて、代々木アニメーション学院(以下、代アニ)の広告や宣伝に使われていたコピーのひとつに、就職率100%というものがありました。
代アニが売上高77億円を計上したのが1998年4月期でしたから、このくらいの時期にリアルタイムで耳にした方もいたはずです。
実を言うと、当初は【就職率100%】を謳っていた大学や専門学校は他にもあったので、さほど気にする方もいなかったように記憶しています。
にわかに問題視され始めたのは、時期で言えば90年代後半から2004年手前にかけてです。
代アニの業績低迷と資金繰り悪化が段々と表面化し始めるにつれて「代アニの就職率100%もおかしいぞ」という声が大きくなっていったのです。
さて、この【就職率100%】が本当だったのか全くのでたらめだったのか、きちんとした決着はついていません。
ただ、アニメや声優と言ったエンタメ業界への就職は簡単ではないことから、学校関係者でなくとも【就職率100%】という高い数値は、誰もが訝しく異常に感じていました。
現在も【就職率100%】をコピーに広告をうつ学校はありますが、代アニは【就職率100%】というコピーは一切使わなくなり、今は一部の進路実績を公開するだけに止めています。
※2022年3月 東京校高等部実績
引用元:代々木アニメーション学院公式
このことからも、たとえ【就職率100%】だった時期が本当にあったのだとしても「誇大広告あるいは都合の良い計算の仕方によるものだったのではないか」と言う説が大勢となっていきました。
要するに代アニの【就職率100%】が全くの虚偽だった確証はないが、就職率は計算の仕方で恣意的に作り出せるので鵜呑みにするなということです。
※代々木アニメーション学院2024年入学案内には各学部の卒業生や就職先が掲載されています。具体的な就職率という文言はやはり見当たりません。
代アニのひどいコピー【就職率100%】はどんな計算をしたのか?
いわゆる「都合の良い計算の仕方」をしていたのかどうかは、代アニ自身が公開したわけではないので、まことしやかに囁かれている憶測の域を出ません。
しかし、代アニに限らず「卒業生の数」や「就職先・進路実績」などの細かい情報公開をしないで【就職率100%】を謳っている学校は、往々にして以下のような「都合の良い計算」をしているのではないかと疑われてしまいます。
- 1人で複数の内定を就職の数とした
- 正規・非正規、パート・アルバイトの区別なく就職とした
- その場しのぎの仕事を斡旋した
- 就職を諦めさせた
1人で複数の内定を就職の数とした
【就職率100%】をたたき出した方法としてネット上で最も有力視されているのが「1人が獲得した複数の内定を就職した人数にした」というものです。
例えば、1人の生徒が3つ内定を獲得した場合、3人の就職が決定したことにしてしまうのです。
正規・非正規、パート・アルバイトの区別なく就職とした
通常、代アニで【就職率100%】と聞けば、皆がアニメや声優といったエンタメ業界の正社員、あるいはデビューができたのだと想像してしまいます。
ですが、実際はアシスタントやお手伝い、もっとひどい時は短期間のアルバイト採用に至るまで就職が決まった卒業生の数に含めたのではないと言われています。
その場しのぎの仕事を斡旋した
昔から厳しいと言われるエンタメ業界ですので、卒業後の進路が決まらない生徒はいたはずです。
そのような生徒に対して、代アニはとりあえず働けそうな仕事を紹介して、就職率を保ったのではないかとも言われています。
生徒の希望とは全く関係のない仕事でも、学校から斡旋されて「言ってみてはどうか」と薦められれば、普通はあまり断りません。
就職を諦めさせた
就職率を高める方法として最も悪質なやり方に「就職を諦めさせる」というものがあります。
下記のように「就職率を求める計算式」の分母は、あくまで就職を希望する卒業生でなければなりません。
「デビューするために今年は就職を我慢して、もう少し自己学習期間にしたらどうだ」などと生徒を説得し、これを「就職の意思のない生徒」とし就職率の計算過程に含めないやり方も可能なのです。
繰り返しになりますが、本当にこのようなやり方をして【就職率100%】を作り上げていたという確証はありません。
代アニの【就職率100%】の真相が追及できなかった理由
代アニが謳っていた【就職率100%】は非常に疑わしいものとされていながら、真相が追及されることなく、ネット上で確証のないことばかり言われ続けてきました。
それはおそらく、代アニが無認可校であることが一つの要因ではなかったかと個人的には考えています。
通常、認可校は法的根拠を以って情報開示を強く求められることがありますが、代アニのような無認可校は法的に拘束されにくい側面があります。
つまり、【就職率100%】の根拠や正確な計算過程を、代アニが開示する義務はなかったので、いつまでもその真偽が明白とならず、憶測がずっと流れ続けたのです。
ちなみに就職率という言い方も、正確には「就職・デビュー率」のような独特な言い方をしていたと記憶しています。
まとめ
- 代アニの【就職率100%】の真偽は未だ明らかとなってはいないが、ある程度恣意的な計算の仕方をしていたと言う説が有力である
- 現在、代アニは【就職率100%】というコピーは使っておらず、一部の進路実績を公開しているのみ
- 無認可校であったが故、独自の計算で就職率を公開することもでき、それについて情報開示する義務も負わなかったのではないかと思われる
※代々木アニメーション学院の進路実績、就職先、活躍している卒業生などは「入学案内」に詳しく掲載されています。【就職率100%】事件は昔の代アニの話とはいえ、どう改善されているかはご自分の目でしっかりご判断ください。
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