代々木アニメーション学院(以下、代アニ)は、2004年4月から2005年1月にかけて【入学金・学費返還制度】を設けて、TVCMや雑誌などで大々的に宣伝していました。
その広告媒体によっては文言に多少の違いはあったものの、その内容は概ね次のようなものでした。
「入学式前にご入学をとりやめた時、入学金・学費をお返しします」
ところが、実際に入学を辞退すると、納付した入学金・学費の全額が戻って来るわけではなかったことで問題となりました。
当時、代アニは入学手続きの際に入学金を含む「59万~65万円」を納付させていましたが、入学を辞退すると、このうち22万円を「キャンセル料」名目で返還していなかったのです。
これに対し、公正取引委員会は「一部を返還しなかったのは景品表示法違反(有利誤認)に当たる」として代アニ(当時の経営母体はライブ・アニメイション)に排除命令を出しました。
有利誤認とは「実際より著しく優れている又は安価であると誤解させること」
排除命令とは「その行為の撤回、再発防止を求める行政処分のこと」です。
当時の代アニがどのような意図で【入学金・学費返還制度】を行っていたのか明確に語られたことはありませんが、大方は悪化する資金繰りを打開するための苦肉の策だったのではないかと言われています。
以下、詳しく解説していきます。
◆当時、よく流れていた【入学金・学費返還制度】のTVCMを再現してみました。
女性リポーターが黒人男性に向かって突然インタビューを始めるというもので、黒人男性のたどたどしい日本語などインパクトがあり、けっこう話題になりました。
※アニメーション動画はタップノベルで作成させていただきました。
※学費に関する支援制度は2024年入学案内を、各学部の学費の詳しい内訳は入学案内と一緒に送付されてくる「募集要項」をご確認ください。
代アニのひどい事件【入学金・学費返還制度】は何が目的だったのか?
2004年11月に所有不動産を国税局に差し押さえられてから、2006年12月に民事再生法の適用申請をするまで、代アニの業績低迷と資金繰りの悪化が続いていたことは周知の事実です。
【入学金・学費返還制度】はこの状況下で何とか資金繰りする為の苦肉の策だったと考えられています。
【入学金・学費返還制度】は当座の資金を増やす策だった?
当時の【入学金・学費返還制度】の広告コピーによく添えられていた文言に「好評」というものがありました。
これを見た中には「まるで代アニは入学辞退を推奨しているようだな」と感じる方もおりました。
【入学金・学費返還制度】を「好評だから是非利用してください」という事は、つまり「是非、入学を辞退してください」と言っているようなものだというのです。
「言われてみると、確かにおかしな制度だな」と感じる方は当時から割と多かったのです。
【入学金・学費返還制度】のからくり
当時の代アニは、競合が増えて入学希望者も減少していました。
あくまで個人的な印象ですが「入学式前に他の学校に入学予定者を奪われるくらいなら、キャンセル料名目で少しでも利益が取れる」【入学金・学費返還制度】は苦しい代アニにとって最適でした。
ただし、最初からそのような意図を持っていた確証は何もありませんし、現在の代アニは募集要項で主に「入学金・学費の返還はしないこと」を明確に述べています。
12. 全日制学費返還
▼ 2023年4月入学生
①入学前に辞退する場合
2023年3月31日以前に辞退する場合、入学金については返還いたしません。 ※別途、事務手数料として2万円をいただきます。
(入学を辞退する場合、所定の「入学辞退届」の提出が必要です。)
②入学後に退学する場合
2023年4月1日以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。
③進級後に退学する場合
2024年4月1日以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。
④高等部を退学する場合
高等部は原則、全日制学部との同時受講となります。何らかの事情により全日制学部を退学される場合、高等部も同時に退学となります。
代々木アニメーション学院の学費返還については上記に準じます。
▼ 2022年10月入学生
①入学前に辞退する場合
2022年9月30日以前に辞退する場合、入学金については返還いたしません。 ※別途、事務手数料として2万円をいただきます。
(入学を辞退する場合、所定の「入学辞退届」の提出が必要です。)
②入学後に退学する場合
2022年10月1日以降以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。
③進級後に退学する場合
2023年4月1日以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。
▼ 銀河劇場アカデミー 2023年4月入学生
①入学前に辞退する場合
2023年3月31日以前に辞退する場合、入学金については返還いたしません。 ※別途、事務手数料として2万円をいただきます。
(入学を辞退する場合、所定の「入学辞退届」の提出が必要です。)
②入学後に退学する場合
2023年4月1日以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。
③進級後に退学する場合
2024年4月1日以降に退学する場合、納入された当該年度分の学費は返還いたしません。引用元:代々木アニメーション学院「2023年募集要項」
要するに、一度納入してしまったら返還ができない旨が明確に記されています。
現在では返還どころかむしろ、事務手数料として別途2万円が請求されることになりました。
過去に誤解を招いて排除命令を受けた教訓から、あいまいな表現は一切省いたといったところでしょうか。
ちなみに、かつてのキャンセル料名目で返還しなかった金額は22万円、現在の入学金20万円+事務手数料が2万円で、これも合計22万円(入学辞退しても返還しない金額)です。
余談になりますが、もしかすると、入学予定者が辞退しても代アニが損失を被らない最低ライン(一部利益を見込める金額)が22万円ということなのかもしれません。
※当サイトは代アニ「入学案内」「募集要項」に記されている公式な情報を基にしておりますが「募集要項」は毎年頻繁に細かい変更があります。入学金と学費についても同様です。無料の入学案内を取り寄せ、ご自分でも必ず詳細の確認をお願いいたします。
コメント